研究概要 |
家兎S状結腸(SC)への供給血管の各種血行遮断モデルを作成し、SC漿膜面の色合いを非接触型色彩色差計を用いてL^*a^*b^*表色系色度図にしたがって色合いを数値化し、同部位の組織血流量との相関関係を検討することにより腸管の血行動態を客観的に評価する試みを行った。家兎(n=10)を用いて全麻下に(1)後腸間膜動脈、(2)内腸骨動脈(両側)、(3)前腸間膜動脈を遮断して、I群((1)のみの遮断)、II群((1)+(2)の遮断)、III群((1)+(2)+(3)の遮断)を作成した。各処置前後のSC漿膜面の色相(a^*,b^*)、彩度(C^*=a^<*2>+b^<*2>)を色彩色差計を用いて測定し、同部位でレーザー血流計を用いて血流量(LDF:ml/min/100g tissues)を測定した。測定条件は入射光を暗幕で遮断し、無影灯で被写体の位置の照度が7501xになるように設定した。色彩色差計は被写体から20cmの位置に固定し(視度調節70゚にして測定し、校正は白色校正板を用いた。各測定値の平均は、コントロール群がa^*36.1±3.3、b^*18.2±3.3、C^*40.5±3.6、LDF68.8±18.0、I群がa^*28.8±4.2、b^*13.6±2.9、C^*31.8±5.1、LDF21.7±8.7、II群がa^*27.9±4.7、b^*12.7±2.9、C^*30.7±5.3、LDF13.3±4.9、III群がa^*22.7±4.3、b^*9.8±2.3、C^*24.8±4.5、LDF8.3±5.8であった。すべてのパラメーターにおいて各処置群とコントロール群間に有意差がみられた。a^*はI群とIII群間、II群とIII群間に有意差がみられ、b^*はI群とIII群間に有意差がみられ、C^*はI群とIII群間、I群とIII群間に有意差がみられた。LDFはI群とII群間、I群とIII群間に有意差がみられた。彩度とLDFには強い相関がみられた(R=0.74,p=0.001)。以上の結果より、腸管の血流の減少は、主に赤方向(a^*)、一部黄方向(b^*)の成分が減少し、さらに赤方向の色相であざやかさ(C^*)がくすんだ色合いになることが示された。
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