研究概要 |
昨年度までの研究において、我々は、乳癌組織の手術による摘出標本を用いて、癌関連遺伝子産物であるC-erbB2,p53蛋白の発現及びHSP70、EGFRの組織発現を免疫染色法を用いることにより、癌の悪性度に関わる、これらの発現とその予後について検討した。その結論としてC-erbB2,p53の発現とその術後の予後、またHSP70の乳癌の悪性度との関連性が示唆された(Am.J.Clin.Pathol.,101,1994). 平成6年度においては、穿刺吸引にて得られた細胞を用いてp53に着目し、細胞診にての判定による良性群(Class I〜II)、悪性群(Class IV〜V)及び境界領域(Class IIIa、b)、それぞれの症例におけるp53 point mutationの出現について比較検討を加えた。更に、摘出腫瘍を用いて、p53蛋白、ERレセプターの検出及びDNA ploidyパターンの検討を行い、それぞれの群での比較を行った。その結果、良性群26例中、p53 gene mutation の2例が検出されている。これらはいずれの摘出標本にても、p53蛋白、ERレセプター陽性、更にDNA aneuploidであった(Tumor Res.,29,1994)。一方、境界領域において、最初の細胞診にてclass III a、bの診断が得られた15例の場合は、確定診断の癌症例、7例中5例にgene mutationが得られ(33%)、すべてがaneuploidパターンであり、しかもp53蛋白陽性であったが、ERレセプター陽性は5例中3例であった。(Jpn.J.Cancer Res.,86,1995).また悪性群22例においてのmutation発現率は36%(8例)であり、p53蛋白陽性11例(50%)、DNA aneuploid パターンは16例(73%)、また、これらに加えて組織学的検索にての悪性度は、p53gene mutationに伴って高くなっていることが示唆されている。(未発表データ)。 穿刺吸引細胞を材料として用いたp53 gene mutation の検出は、細胞診判定及び治療の向上に有用であり、予後の改善にも期待されるもとと考えられる。現在、更に症例を集積中である。
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