MHCを共有するが、mHの異なる糖尿病抵抗性DR-BBから糖尿病自然発症DP-BBラットへの移植膵は全例拒絶(24.0±4.2日)されたが、抗接着抗体投与群(抗ICAM-1、抗LFA-1抗体)は全例生着(>400日)した。MHC及びmHをもともに共有するWFuラットから糖尿病発症DP-BBラットの組合せにおいては、高率にIDDMの再発を認めた。糖尿病発症DPラットはT細胞数減少、T細胞機能異常(IL-2産生低下、ConAに対する低反応、BUFアロ抗原に対するMLR低反応)を認めた。また、DPラツトでは免疫調節を司る(自己免疫機序を抑制する)とされているRT6陽性T細胞が末梢リンパ組織でほとんど欠損しており、これがT細胞機能異常および糖尿病発症に重要な役割を畑氏ていると考えられた。なお、DRラットおよびWFuラットでは、こうしたT細胞機能異常を認めなかった。WFuからDPラットへの移植膵にIDDMの再発がみられた場合には、依然としてT細胞数減少、T細胞機能異常が認められ、RT6陽性T細胞の末梢での出現は認められなかった。DR膵が拒絶されたDPラットではT細胞数及びT細胞機能は依然として低下したままであり、DR抗原に向かう抗体が検出され、細胞性免疫によるというよりむしろ、抗体による液性免疫により拒絶されると考えられた。しかしながら興味ある事実として、抗接着分子抗体を投与して移植膵の生着したDPラットでは、T細胞数が有意に増加し、DPラットで認められた上記のT細胞機能異常は著明に改善した。また、この移植膵生着ラットでは末梢において、RT6陽性細胞の出現を認めた。従って、IDDM発症を調整していると考えられているRT6陽性T細胞がどのうよなメカニズムで末梢に出現してくるのかは不明であるが、この細胞の出現によりIDDMの再発が予防され、かつ、T細胞の機能異常が回復する可能性が示唆された。
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