研究概要 |
III度広範囲熱傷患者における救命治療の根本である超早期焼痂皮切除の有効性、および焼痂皮を残すことの病態への悪影響を動物実験により検討することを目的とした。後者については、重症患者における臓器障害発生への関与が注目されている活性酸素、とくに組織障害性は最も大きいが、観察が困難であったハイドロオキシラディカルをアスピリン法(アスピリンのハイドロオキシラディカルとの特異的反応産物2,3-dihydroxybenzoate:DHBを測定)にて観察した。当初の計画との変更点として、臨床患者検体を用いアスピリン法を確立すると同時に、従来からの活性酸素障害の指標であったmalondialdehyde(MDA)との相関を検討した。 研究成果および考察は以下のごとくである。 1、アスピリン法による2,3-DHBの測定は血中遊離ヘモグロビン濃度により大きく影響された。 2、広範囲熱傷患者の受傷早期では遊離ヘモグロビンが多く、2,3-DHB値も高値であり、MDAとの相関も明かではなかった。 3、4病日以後のいわゆる感染期では2,3-DHBとMDAは相関し、活性酸素のオリジンとして顆粒球の関与が大きいと考えられた。 4、4病日以後では、活性酸素濃度と熱傷面積、および肺機能の指標としたrespiratory indexとは相関した。 5、超早期焼痂皮切除動物、および非熱痂皮切除動物での顆粒球の活性酸素産生反応を検討するため、 (1)両群の顆粒球をFMLPにて刺激すること、 (2)両群でのサイトカイン動態の変動、 などを観察する計画を立てている。
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