研究概要 |
III度広範囲熱傷患者における救命治療の根本である超早期焼痂皮切除の有効性、および焼痂皮を残すことの病態への悪影響を活性酸素障害面より検討することを目的とした。 活性酸素障害の指標として、組織障害性は最も大きいが、観察が困難であったハイドロオキシラディカルをアスピリン法(アスピリンのハイドロオキシラディカルとの特異的反応産物2,3‐dihydroxybenzoate:DHBを測定)で観察し、平成4年度実績報告にて臨床患者検体でのアスピリン法の有用性を報告した。しかし今回実験動物としたラットではアスピリン法でのDHB測定が困難であり、アスピリン法の2,3‐DHBと臨床例(手術患者)で値の相関したTBS法によるmalondialdehyde(MDA)を測定した。以下本年度の実績を示す。 1、重症外科手術患者ではアスピリン法による2,3‐DHB測定値は障害臓器数、予後と相関し、活性酸素が病態の重症度に関係すると考えられた。 2、ラット熱傷皮膚中のMDAは直後1703nmol/gr、2時間後1310nmol/grで熱傷直後に熱傷局所に活性酸素が多く発生した。また、熱傷2時間後の血中、肺、肝MDAはそれぞれ2.3vs2.3nmol/ml(切除群vs非切除群)、272vs293nmol/gr、304vs292nmol/grで両群間に差はみられなかったが、胃MDAは115vs273nmol/grで非切除群で高値であった。 3、広範囲(30%)熱傷ラットの焼痂皮非切除群の1カ月生存率は43%であり、切除群では25%、切除同種皮膚移植群では50%、切除皮膚縫合群では100%で、焼痂皮を切除しても切除部の被覆が不十分であった場合には、超早期焼痂皮切除は生存率の改善には益しないと考えられた。
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