健常人末梢血20-50mlよりDynabeadsを用いてCD4^+T細胞を分離し、固相化抗CD3抗体とInterleukin-2(IL-2)により培養を開始した.さらに筆者らが開発した濃縮回転培養法を導入し大量培養を行い、CD4^+T細胞を養子免疫療法に利用しうる10^9個レベルにまで増殖せしめることが可能であった.しかも、それらの培養T細胞はIL-2産生能のみならず細胞障害活性をも有していた.また、担癌生体においても十分大量培養が可能であり、増殖培養されたCD4^+T細胞は、健常者とほぼ同等のIL-2産生能ならびに細胞障害活性を有することが明かとなった. 抗CD3抗体(OKT3)およびマウス抗c-erbB-2monoclonal抗体をそれぞれペプシンあるいはパパインで処理し、F(ab')_2分画を得、さらにFab'チオール誘導体としたのち、両モノマーを室温にて4hr反応後分離して作製した抗CD3×抗c-erbB-2 bispecific antibody(BSAb)の反応性をflow cytometryにより検討してみると、培養CD4^+T細胞については、nativeの抗CD3抗体と同様の反応性を有し、また種々の乳癌細胞株を含むc-erbB-2陽性細胞に対しても、native抗c-erbB-2抗体と同程度の反応性を有していた. つぎに、健常人および乳癌患者末梢血より培養したCD4^+T細胞と抗CD3×抗c-erbB-2 BSAbをもちいてin vitroでの細胞障害活性およびIL-2産生能を検討した.種々のc-erbB-2陽性乳癌細胞株に対する細胞障害活性は、乳癌患者由来のCD4^+T細胞も健常人のそれと同等の活性を有していた.また、IL-2産生能においても同様で両者に差を認めなかった. 以上より、担癌患者末梢血より分離、培養したCD4^+T細胞も健常人と同様に十分なhelperおよびkiller活性を有していることが明かとなり、抗CD3×抗c-erbB-2 BSAbをもちいることによりin vitroにおいてc-erbB-2陽性腫瘍細胞にtargettingすることが可能であると考えられた.次年度は、in vivoでの効果を検討する予定である.
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