本研究は、ヒトc-erbB-2蛋白のextracellular domainを認識するmonoclonal抗体と抗CD3抗体よりなるbispecific抗体(BSAb)を用いて、癌患者リンパ球より培養したhelper機能と細胞障害活性とを同時に有するCD4^+helper/killer細胞を腫瘍局所にtargetingする、BSAb-directed adoptive immunotherapyの臨床応用を目的として、その基礎的検討を行った。作製したBSAbは、ヒトc-erbB-2蛋白陽性腫瘍細胞株に対してnativeの抗体と変わらぬ反応性を有しており、また、CD3に対してもnativeOKT3と同様の反応性を有することが確認された。そして、臨床応用に必要な量の供給体制を確立した。一方、effector細胞であるCD4^+helper/killer細胞は、担癌患者においても健常者と同様、十分なhelper/killer機能を持って臨床応用に必要な細胞数まで培養することが可能であった。preclinical studyとして、まず、培養CD4^+helper/killerT細胞およびBSAbによるin vivoでの抗腫瘍効果をヌードマウスを用いたWinn's assayにて検討し、ヒトc-erbB-2蛋白陽性腫瘍細胞株の増殖を完全に抑制した。さらに、CB.17scid/scid(SCID)マウスの雌にヒトc-erbB-2蛋白陽性乳癌細胞株2×10^6を腹腔内に接種し(dayO)、day1およびday2に5×10^7個の乳癌患者より培養したCD4^+T細胞と12.5mcgのBSAbを腹腔内に投与したところ、CD4^+T細胞およびBSAb投与群はBSAb単独投与群に比して有意に生存期間の延長が認められた。 以上の検討にもとづき、本療法の臨床応用を当施設倫理委員会に申請し、承認を得、現在症例を集積している。
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