平成4年度は、まずDA系ラットの主要組織適合抗原に対する抗血清をPVG、WAG、BN系ラットで作製し力価を測定した。免疫はDA脾細胞1×10^8個を1週間おきに3回投与した。また、一部は免疫前に細胞を熱処理(60℃、1時間)し、クラスI抗原を変性、消失させクラスII抗原のみを残した。免疫に用いたラットは、それぞれDA系に対してPVG系が低反応系、WAG、BN系が高反応系とされる。抗血清の力価もこれに対応していた。このうちBN抗DA血清は力価および補体結合反応による細胞障害活性が最も高かった。ラットにおける異所性心移植の生着延長効果を調べると、無処理群では7-9日の生着日数が、手術日に抗血清を1ml静脈内投与することにより11日程度にまで延長した。対照として行なった肝移植ラット血清(PVG抗DA)では、11、16、30日と、今回作製した血清より強力な効果がみられた。現在、心移植のドナーとして主要組織適合抗原がDA系と同一(RTl^a型)であるPVG由来のコンジェニック系、PVG、RTl^a系を用いているが、移植心の生着延長効果が予想よりも低かった為ドナーとしてF_1ハイブリッドを用い移植の抗原性を軽減させ、血清因子の効果判定をより容易にしようと考えている。また、熱処理リンパ球に対する抗血清も、心移植の生着延長効果を有したが、熱処理をせずにクラスI抗原を除去する低張溶液処理あるいはパパイン消化法を行なったリンパ球投与による抗血清の効果を比較し、熱処理がクラスII抗原に及ぼす影響について検討したい。
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