研究概要 |
1、cell adhesive matrix (CAM) plateを用いたadhesive tumor cell culture system (ATCCS) による抗癌剤感受性試験: CAM plateを用いたATCCSは培養液中の種々の増殖因子と相俟って線維芽細胞の増殖を防ぎ、癌細胞を特異的に増殖させる。本培養系を抗癌剤感受性試験に応用する利点は (1) 癌細胞の実際の増殖を抑制するシステムである為、試験結果と臨床効果が一致する可能性が高いこと、 (2) plating efficiencyが高いことから必要癌細胞数が少数で済むため、生検材料を用いた感受性試験の可能性があること、と考えられた。 初年度は(2)に関する検討を行った。切除標本から10例、術前内視鏡検査時の生検材料から5例の計15例の進行胃癌症例に対して、感受性試験が施行された。抗癌剤はADM, CDDP, 5-FU, MMCの4剤を使用し、抗癌剤は4段階の濃度で試験を行い、90%の増殖抑制を示す濃度であるIC90を求めた。15検体のうち11検体(73%)で感受性試験を遂行し得た。とりわけ、生検5検体中4検体(80%)で感受性試験に成功しており、手術前に、あるいは切除不能症例においても感受性のある抗癌剤の選択が可能であった。 2、自家骨髄移植を併用した消化器癌に対する大量化学療法の確立: 10例の再発、進行胃癌患者に対して自家骨髄を採取、凍結保存した後、エトポシド 1,200mg/m^2、ADM 80mg/m^2、CDDP 120mg/m^2 投与し、解凍した自家骨髄を輸注したところ、全例生着し治療を安全に施行し得た。治療成績は89%という高い奏効率を得たが、最長生存は13カ月と、十分満足のゆく結果ではなかった。そこで、抗癌剤感受性試験の結果をふまえて、増量する抗癌剤を選択する、あるいは、根治手術と組み合わせた補助療法としての応用を次年度の課題としたい。
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