大腸疾患の病因、病態におけるneuropeptideに関する研究-局所免疫機構との関連とその臨床応用

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670762
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 久保田 芳郎 東京大学, 医学部(病), 助手 (70170040)
• 研究分担者: 篠崎 大 東京大学, 医学部(病), 医員 ; 鮫島 伸一 東京大学, 医学部(病), 医員 ; 渡辺 聡明 東京大学, 医学部(病), 医員 ; 沢田 俊夫 東京大学, 医学部(病), 講師 (50143441)
• キーワード: neuropeptide / 炎症性腸疾患 / 大腸癌 / 大腸ポリープ / transitional mucosa / vasoactive intestinal peptide / substance P / 腸管神経組織

研究概要

1.neuropeptide(NP)による腸管局所免疫反応の制御-炎症性腸疾患の成因、病態に及ぼす影響について:神経系と炎症・免疫系は密接な機能的、構造的関連のもとで生体の恒常性の維持をはかっている。そこで免疫異常が病態に関与しているとされる炎症性腸疾患(IBD)において、vasoactive intestinal peptide(VIP)、substance P(SP)などのNPの病態に及ぼす影響について検討した。その結果IBDにおいてはVIP陽性神経線維、somatostatin陽性内分泌細胞は減少しているが、substance P陽性神経組織は増加していた。VIPは腸管免疫抑制作用を、またSPは促進作用を有すると報告されており、NPかIBD病態形成に深く関与している可能性が示唆された。
2.transitional mucosa(TM)におけるVIP含有神経組織の異常について:大腸癌及びTM間質における神経組織について、特にVIPの異常を免疫組織学的に検討した。その結果、TMではsialomucinの増加と〓窩長の増加がみられ、またVIP陽性神線線維、およびS-100蛋白陽性神経線維の減少が認められた。従ってTMでは神経組織の異常があり、形態学的、粘液組織学的異常に影響を及ぼしていると考えられた。
3.大腸ポリープにおける粘膜固有層神経組織の検討:大腸癌および大腸ポリープの粘膜固有層の神経組織の異常を明らかにする目的でS-100蛋白陽性神経線維を免疫組織学的に検討した。その結果、化生性ポリープを除く大腸ポリープでは間質がnormal neural regulationから逸脱していることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Kubota,Y.: "Colonic vasoactive intestinal peptide nerves in inflammatory bowel disease" Gastroenterology. 102. 1242-1251 (1992)
• [文献書誌] Watanabe,T.: "Distribution and quantification of somatostatin in inflammatory disease" Dis Colon Rectum. 35. 488-494 (1992)
• [文献書誌] 久保田芳郎: "炎症性腸疾患の現在:VIP,消化管ホルモン" Modern Physician. 12. 1613-1616 (1992)
• [文献書誌] 内山雅之: "大腸粘膜固有層におけるVIP含有神経線維の分布" 消化器と免疫. 28. 90-94 (1993)
• [文献書誌] 内山雅之: "大腸ポリープにおける粘膜固有層神経組織の検討" 消化器癌の発生と進展. 5. 321-325 (1993)
• [文献書誌] 内山雅之: "Transitional MucosaにおけるVasoactive Intestinal Peptide含有神経組織の異常" 日本大腸肛門病会誌. 47. 101-110 (1994)
• [文献書誌] Yoshiro Kubota: "Frontiers of Mucosa1 Immunology" Excerptica Medica,Amsterdam, 1563 (1991)
• [文献書誌] 久保田芳郎: "21世紀を目指しはばたく消化器病学" 日本医学館、東京, (1993)