臓器移植の普及に伴いドナー臓器の不足が深刻化してきており、異種肝移植への関心が高まっている。実際に臨床においてヒヒからヒトおよびブタからヒトへの異種肝移植が行われたが、いずれも成功とはいえず、免疫学的問題や生理学的変化などを検討する基礎的実験の必要性が再確認されている。 本年度はハムスターからラットへのconcordant異種心移植および肝移植における免疫抑制剤FK506の免疫抑制効果について検討した。心移植については腹部への異所性心移植をモデルとし、肝移植については肝上部下大動脈吻合にもカフ吻合法を用いるthree-cuff methodにて作成した同所性肝移植をモデルとした。 心移植モデルではFK506 1.0mg/kgの投与では生着期間は3.2±0.4日であり、control群の生着期間2.7±0.3日と有意差を認めなかったのに対して、肝移植モデルではFK506の2週間投与により生存期間は26.8±8.2日となり、control群の生存期間6.8±0.3日との間に有意差(p<0.05)を認めた。従来より同種移植では肝臓は心臓と比較すると拒絶されにくいという臓器特異性を持っていることが知られているが、異種間での移植でも同様な事象の起こることが明らかとなった。 またハムスターからラットへの異種肝移植モデルにてアミノ酸組成の変化について検討した。アミノ酸組成についてはラット間、ハムスター間、異種肝移植モデル間での個体差が大きく、一定の傾向を明らかにすることはできなかった。異種肝の産生する物質の生理学的影響を検討するためにはタンパクレベルでの検討が必要と考えられた。今後とも異種移植の免疫学的および生理学的問題について研究を続けてゆきたいと考えている。
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