研究概要 |
肝門部胆管癌および肝門部浸潤を有する胆嚢癌に対して,肝十二指腸間膜全切除と拡大肝門部肝切除を行う新術式を臨床応用することを目的として本研究を行った。本術式において術後に予測される肝不全に対する対策と,肝動脈,門脈,胆管の切除再建の新工夫が是非とも必要である。研究初年度である今年は術後肝不全対策として部分的門脈動脈血化法について,とくに体内シャント作成による比較的長時間の動脈血化をめざして種々のシャント法を比較検討した。シャント法は1)肝内門脈-自家血管移植片-左胃動脈シャント,2)肝内門脈-自家血管移植片-大動脈シャント,3)脾動脈-脾静脈シャント,4)空腸動脈-空腸静脈シャントにより検討した。各々2-4週後に再開腹し,電磁血流計による門脈血流量,シャント流量,肝組織血流量,肝酸素供給量,肝酸素消費量,肝エネルギーチャージ,肝乳酸摂取量,血中乳酸値,血液生化学的検査などを施行測定し,肝の組織学的検索および胆汁分泌の変化についても検討した。手技上の問題より耐術率が比較的低く統計学的検討にまでは至っていないが,肝内門脈左胃動脈シャント,空腸動脈空腸静脈シャントで良好であった。なお血管移植片によるシャント群でのシャントの開存性が不良であり今後の課題である。また肝内門脈大動脈シャントおよび脾動脈脾静脈シャント群では門脈内流入動脈血液量が過大となり門脈左尤進および小腸うっ血を来たし死亡するイヌもみられた。肝内門脈左胃動脈シャントでシャントの開存性を維持しえた場合,空腸動脈空腸静脈シャントでシャント流量を適当な値に維持しえた場合において良好な肝酸素供給が得られ,組識学的にも正常に近い像を維持した。以上より門脈左胃動脈シャントおよび空腸動脈空腸静脈シャント群で適当な場合径を選択し,4週以上の検討を今後行う予定である。さらに細門脈,肝動脈再建手技についても次年度より検討する。
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