研究概要 |
Colon26の腫瘍細胞5×10^5個をBALB/cマウス皮下に接種し、免疫療法単独及び化学療法併用の治療効果を検討した。OK-432の免疫賦活剤を、腫瘍移植後10日後に腫瘍内に注入することにより、腫瘍増大の抑制がみられ生存期間も延長した。化学療法剤のCyclophosphamide(CY)の腹腔内投与では、一時腫瘍縮小するも再び増大し腫瘍死した。両者の併用では、腫瘍縮小効果、生存期間ともに単独群より良好であった。この併用群の所属リンパ節のリンバ球サブセットはL3T4比率の増加がみられたが、L3T4/Lyt2は軽度の増加であった。併用療法時の脾臓リンパ球に着目し、この脾臓リンパ球をeffector,Colon26をtargetとしたWinn assayでは,OK単独、併用群、CY単独群の順に、脾細胞の腫瘍中和能が認められた。 摘脾の時期による腫瘍縮小効果の変化は、上記の併用治療群で、Cy投与後、6hr後の脾摘群(6hr群)と12hr後の脾臓群(12hr群)で比較したところ、12hr群の方がより腫瘍が縮小した。脾臓リンパ球サブセットのThy1.2、L3T4比率はともに6hr群で増加し、12hr群で低下していた。以上より、免疫化学療法の効果発現には、脾臓の存在が必要であることが示唆された。 1983年10月〜1991年9月までの当科での胃癌切除例500例中、StageII、III胃癌の脾摘群及び脾温存群で、免疫賦活剤のOK-432を投与した群しなかった群の4群に分け、5年生存率を検討した。その結果、StageII及びIIIともに、脾を温存し、OK-432を投与した群は、脾摘しOK-432を投与しなかった群より有意に生存率が良好であった。また、StageIIIの、OK-432投与した群で、脾温存群の方が脾摘群より生存率が有意に良好であった。 したがって、胃癌切除後の術後免疫化学療法において脾臓の存在が有用であることが明らかとなった。
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