重症感染時の生存の鍵を握る臓器として、細網内皮系機能中枢としての肝臓に着目し、肝不全への移行のメカニズムの解析と同結果の臨床応用を研究した。肝臓マクロファージ、Kupffer細胞の選択的阻害剤であるガドリニウムクロライド(GdCl_3)の前投与により、到死量エンドトキシン投与ラットは死亡しなかったという実験モデルにおいてTNF、IL-1など従来より感染重症化の過程にpriming factorとして考えられたサイトカインの血中値はGdCl_3の投与の差には関係ないことが示された。また、GdCl_3の投与により、肝不全から死に至る過程を逆行させることが可能であるかどうかを、肝阻血あるいは、大量肝切除(70%、90%)後に非死到量エンドトキシンの末梢血内、及び門脈内投与を行ない、死亡へのメカニズム解明を努めた。上記サイトカイン値の絶対的関与がないことはこれら実験でも同様に示され、GdCl_3により死亡率改善が認められた。ただし、大量肝切除でも90%切除モデルでは24時間後全例死亡しており、Kupffer細胞のoveractivationをおさえることとは別にhepatocyte自体の可逆性、量的限界が予後に関与していると考えられ、従来よりのhepatocyte補助を直接目的にしたliver supportの重要性はかわらない。 GdCl_3の作用機序の解明についてはin vitro、in vivo実験より、superoxide産生抑制に働くことが示され、in vivoにおいてはkupffer細胞機能は約12時間後頃に戻り可逆性があることが示された。 GdCl_3とは別に、PGI誘導体による肝阻血犬のviability改善効果を認めており、liver support systemにおける投与方法を解析している。
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