脂肪肝の程度を差異による虚血認容性の変化を検討するため、コリン欠乏食投与期間によりラットを以下の3群に分けて検討した。I群は通常飼料にで飼育したコントロール群。II群、III群は虚血前それぞれ、1、4週間コリン欠乏食を投与し、脂肪肝を作製した群とした。虚血時間は60分間とし、肝門部で遮断し全肝虚血とした。虚血前に肝組織を採取してHE染色し、組織学的評価を行なった。虚血解除後、1週間の生存率、胆汁流量の回復率を求め、また虚血前、再潅流直前、再潅流後15分、30分、60分に肝組織を凍結採取し、高速液体クロマトグラフィー法にて高エネルギー燐酸化合物を測定した。組織学的にI群には脂肪滴は認められなかった。II群では肝細胞内の小滴性脂肪化のみであったのに対し、III群では高度な大滴性脂肪化が認められた。虚血後1週間の生存率はI、II、III群でそれぞれ、100、75、0%であり、I、II群はIII群に比し有意に高かったが、I、II群間で有意差はなかった。胆汁流量の回復率はI、II、III群でそれぞれ、52、34、11%であり、各群間に有意差を認めた。肝組織中ATP量はI、II、III群で虚血前、8.85、5.96、5.54μmol/g・dry weight liver(以下単位同じ)と、I群はII、III群に比し有意に高く、再潅流後60分では、それぞれ、5.56、3.20、2.27とI、II、III群の順に有意に高値であった。Total adenine nucleotidesはI、II、III群で虚血前、それぞれ、17.57、12.48、10.53とI群はII、III群に比し有意に高く、再潅流後60分では、それぞれ、10.96、6.95、5.60とI、II、III群の順に有意に高値であった。Energy chargeは虚血前、再潅流後60分ともに3群間に有意差はなかった。 以上の結果より肝虚血に対する認容性の低下は肝の脂肪化が軽度の場合には少ないが、脂肪化が高度の場合には著しい事が示唆された。また肝虚血再潅流障害時の肝のviabilityと肝組織中高エネルギー燐酸化合物の関連性において、正常肝と脂肪肝では相違があることが示唆された。
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