研究概要 |
食道癌細胞株29株を対象にp53 mutationを検討した。29細胞株のうち22株(75.9%)の高率にSSCP法でshiftがみつかった。p53mutationが培養の過程で生じたものか、p53にmutationのあるものが培養可能となるのか後述の新鮮標本と比較検討したところ、新たに10細胞株にてp53 mutationが生じていた。p53 mutationの形式が新鮮標本と株細胞で異なっており、p53 mutationが株細胞になってから蓄積してきたものと考えられた。 さらに樹立された食道癌株における遺伝子の検討をc-myc,erbB,ras,hst-1,CyclinD1、b-FGF,p53,Cip1/Sdi1/Waf1/p21についてまとめて検討を行ったところ、まったくモザイクになっており培養に関連する特定の遺伝子を認めないことが判明した。rasについてはまったく増幅を認めなかったので食道癌には関与していないと判断して良いと思われた。 新鮮標本におけるp53 mutation,Rbのloss,APC locusのloss、さらにこれら抑制遺伝子とからみあって細胞周期に関連するCyclinD1、MDM2,HPV感染についての検討では、MDM2の増幅と培養可能性に関連を認めた。 transwell,matrigelを利用した転移浸潤モデルでは有血清下細胞と無蛋白培養化細胞とのあいだに転移浸潤に明瞭な差を認めなかった。 細胞運動に関係するMRP-1抗体は癌細胞の浸潤能を低下させたが、有血清下、無蛋白培養下での差は認めなかった。 無蛋白培養化よる膜の流動性に変化は認められなかった。
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