研究概要 |
肝臓浸漬保存に伴う障害をMagnetic resonance imaging(MRI)は測定時間が短く、潅流を必要とせず非侵襲的である。Protonを核種とした場合、細胞に含まれる自由水、結合水の細胞障害による変化を知ることが出来、保存臓器の評価が可能である。そこで、ラット肝臓(1)門脈より生理的食塩水(SA)及びEuro‐Collins' solution(EC)、University of Wisconsin solution(UW)にてflush後、4Cにて12時間浸漬保存した場合の臓器評価、(2)Harvest時に出血性ショックにより平均動脈血圧を40mmHgの低血圧に1時間維持した後、UWに保存した場合と対照との比較を2T CSI Omega 1H-MRIをもちいて行なった。T1‐weighted imaging(T1‐W),T2‐weighted imaging(T2‐W),Proton density‐weighted iamging(P‐W),Diffusion‐weighted imaging(D‐W)を測定し、磁場、測定温度の変化を是正するため、T1‐W/P‐W,T2‐W/P‐W,D‐W/T2‐Wの比を検討した。(1)SAとUWの2種類の保存液による保存肝臓のT2‐W/P‐Wを比較検討すると、初期値に有意差はないが、12時間保存後にSA保存肝臓では初期値に比べ13.5%の延長が見られたのに対し、UW保存肝臓では変化を認めなかった。T2‐W/P‐Wの信号強度比はT2時間に依存する。従って、SAにより肝臓を保存した場合はT2時間が延長するが、UWを用いて保存するとT2時間は変化しない。これらの変化は保存に伴う水分量の変化、保存に伴うNa‐K ATPaseの変化と部分的には一致するが、必ずしも平行して変化せず、細胞内の水の化学的、物理的変化を表していると考えられた。(2)Wiggers' shock modelのT2‐W/P‐Wは保存開始時既に対照に比べ延長しており、その両者の差は、保存中も持続した。従って、摘出時の肝臓の状態が悪い時には、摘出時すでにT2時間が延長していることが判明した。以上の結果から、T2‐W/P‐Wを指標とすれば、1H‐MRIを用いて保存肝臓の非侵襲的評価が出来る可能性が示唆された。
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