研究概要 |
固形癌の間質内にBRMの1つであるOK-432(5KE)をfibrinogen(80mg)と混合して局所注入することによって,きわめて効率の良いリンパ球のin vivo activationが可能であり,ヒト・ヒトハイブリドーマの産生効率を高め得ることが分かった.大腸癌での検討では,局注例で得られたハイブリドーマの約30%が100ng/ml以上のヒト型イムノグロブリンを産生しており,そのうちで癌に特異性の高いイムノグロブリン産生が約20%に認められている.この手法で作成されたハイブリドーマの中から癌との反応性が高い1株(YJ-37,IgM)を選び,抗体の認識するepitopeの解析を行なったところ,そのepitopeは膜に存在するシアル酸を含む糖鎖であり,HPTLCおよびELISA法での検討からsialylated lacto-seriesのIV^3NeuAcα-Lc^4およびIV^3NeuAcα-nLc^4であろうと考えられた.乳癌に対しても同様の局所注入をおこなって,乳癌組織との反応性を指標としてBMMK-33Gと呼ばれるハイブリドーマを得た.この抗体も乳癌細胞の膜と反応したが,正常乳腺のacinusおよびductとも弱く反応する性質があった.さらに,同様の局所免疫療法を甲状腺未分化癌患者に対して施行しハイブリドーマを作成したが,その中の1クローン(3C5)は,同一人の腫瘍細胞から樹立された細胞株(KOA-2)や甲状腺癌細胞(anaplastic & pappillary carcnoma)および乳癌細胞と反応するが,多くの正常組織とは無反応あるいは微弱な反応をしめすのみであることが分かった.これらのハイブリドーマは,最低6カ月以上にわたって高濃度のヒト型イムノグロブリンを産生しつづけることも証明された.以上の結果は,強力な局所免疫療法がリンパ球のin vivo activationにきわめて有効であり,癌に対するヒト型モノクローナル抗体の大量安定供給に道を開くものと考えられる。しかし,本研究期間内ではその臨床応用にまでは至っておらず,今後の研究課題として残されている.
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