9.研究成果の概要(最終年度のまとめ) 本研究は食道癌における癌関連遺伝子の異常について、単にその有無を検索するに留まらず、免疫組織化学およびIn situ hybridization法を用いて、それらを発現している細胞の組織内における局在およびその分布を明らかにすることにより、食道癌の発生および進展過程における生物学的特性を明らかにすることを目的とした。 このような観点から、食道癌の発生に関しては食道異型上皮の前癌病変としての意義について癌抑制遺伝子p53の異変の面から免疫組織化学的に検討を行った。また、食道癌の進展に関しては、Type IV collagenaseの発現をIn situ hybridization法にて検討した。この結果、食道異型上皮はその異型細胞層のみをみるとすでに癌に準じた遺伝子変化が認められることが明らかとなり、前癌病変というよりもむしろ潜在癌病変といえるものであることが示唆された。また、食道癌におけるType IV collagenaseの発現は胞巣あたり数個の癌細胞に認められ、またその発現はStage dependentであり、この酵素の発現が食道癌の浸潤に関与していることが示唆された。食道癌の発生および進展に関与すると考えられる遺伝子の変化について、その局在を明らかにすることにより、その意義についての検討を行った。今後同様の手法を用いて他の遺伝子変化についても検討を行うことにより、それぞれの遺伝子変化の意義および食道癌の発生および進展機構が更に明らかにされることが期待される。
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