研究概要 |
1)門脈遮断のラット実験モデルにおける血中IL-8の変動 ラットの門脈を30分間遮断した後開放し、経時的に血中IL-8の測定を行った。IL-8は6〜12時間後にピークとなりその後徐々に漸減し2日目に正常化した。 2)肝動脈塞栓術、門脈塞栓化学療法によるサイトカインの変動 肝癌に対する肝動脈塞栓化学療法(TACE)施行前後の血中IL-6,IL-8,CRP,PSTI値を経時的に測定し、TACEによる腫瘍栄養血管塞栓の程度・腫瘍縮小効果・腫瘍マーカーの変動との関連について検討した。TACE施行前の血中IL-8は28.5%、IL-6は76%において高値を示し、TACE施行後3日目をピークに上昇を示した。これらのピークは腫瘍が壊死になる時間との関連が考えられた。CRP,PSTIもTACE後上昇し、そのピークは術後5日目にあった。血中IL-6,IL-8の最高値はそれぞれCRP,PSTIの最高値との間に有意の相関を認めたが、IL-6とIL-8との最高値の間には相関がなかった。TACEによるIL-8の誘導は、IL-6の誘導とは異なる機序によるものと考えられた。またIL-6,IL-8の最高値は、栄養血管塞栓の強度と相関を認めたが、腫瘍縮小効果や腫瘍マーカーの変動との相関はなかった。血中TNF,IL-1は、全検体において測定感度以下であった。 3)肝癌患者1例に門脈化学塞栓術(PTPCE)を施行した。術後GOT,GPTは軽度上昇したが、術後7日目には正常化した。PTPCE施行後55日目に拡大右葉切除術を施行した。右葉には軽度の萎縮がみられ、左葉には軽度の腫大がみられた。
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