ドンリュウラットを用いたLiposome-Carboplatin(Lipo-CBDCA)の腹腔内投与の検討では血清中は30分まではfree-CBDCA投与時より低値で、3時間以後は高値となり、Liposome化することにより腹腔内にCBDCAが長時間高濃度に留まり徐放効果が認められた。更にLipo-CBDCA20mg/Kgを腹腔内に投与後1、7、14日後に開腹採血し、GOT、GPT、BUN、Cre、TP、LDH、TB、RBC、WBC、Hb、PLtを測定したが異常値は認められず、同時に肝、脾、腎、腸管を採取しHE染色を行い、組織学的検討を行ったが異常な変化は認められなかった。またラットAH130癌性腹膜炎モデルによる抗腫瘍効果の検討でも、Lipo-CBDCA腹腔内投与群がcontrol群やfree-CBDCA投与群と比較して有意にその生存率の延長が認められた。 一方、Lipo-CBDCAの経門脈的投与による基礎的検討を行うため1バイアル中にCBDCA30mg、egg lechitin50mg、mannitol100mgを含むようにLipo-CBDCAを凍結乾燥法にて作製した。雄ドンリュウラットを用いLipo-CBDCAを5、10、20mg/Kgの経門脈的投与を行い2週間の経過をみたが体重増加も良好であり、他に副作用も認められなかった。更に腸間膜静脈よりLipo-CBDCA、free-CBDCA:20mg/Kgをone shotに投与し血中、および各臓器内のプラチナ濃度を0.5、1、3時間毎に原子吸光光度計を用い測定した。その結果、血中プラチナ濃度は30分値ではLipo-CBDCAが高値であり、1、3時間値は共にfree-CBDCAが高値となり、Lipo-CBDCAの多くが肝臓にTargetingされ徐々に肝臓から長く放出された結果と考えられる。また肝臓、腎臓におけるLipo-およびfree-CBDCAの組織内濃度は肝臓では30分、1、3時間のいずれもLipo-CBDCAが高値であり、反対に腎臓ではLipo-CBDCAが低値であり、臨床応用に際しても腎機能障害等の副作用の軽減に効果があるものと推察される。現在、ラット肝転移モデルを作成しLipo-CBDCAを投与して転移防止ならびに治療について検討している。
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