研究概要 |
進行消化器癌における術後再発予防と治療を目的として、臨床応用が可能なLiposome-Carboplatin(Lipo-CBDCA)を製作・調製し、腹腔内投与による副作用,体内動態,抗腫瘍効果等についてドンリュウラットを用い検討した。血清プラチナ濃度はLipo-CBDCA腹腔内投与において薬剤投与後15,30分では,free-CBDCA腹腔内投与,静脈内投与と比較して低濃度であり,3時間以上経過すると高濃度となった。Lipo-CBDCA:20mg/Kgを腹腔内に投与後、経日的に採血した血液,生化学的検討では異常値は認められなかった。また同時に肝,脾,腎,腸管を採取し,HE染色を行った組織学的検討でも異常は認められなかった。さらにAH130腫瘍によるラット癌性腹膜炎モデルを用いた抗腫瘍効果の検討ではLipo-CBDCA腹腔内投与群がcontrol群やfree-CBDCA投与群と比較して有意にその生存率の延長が認められた。 一方、Lipo-CBDCAの経門脈的投与による検討を行うために1バイアル中にCBDCA:30mg,egg lechitin:50mg,mannitol:100mgを含むようにLipo-CBDCAを凍結乾燥法にて作製した。雄ドンリュウラットを用い腸間膜静脈よりLipo-CBDCA,free-CBDCA:20mg/Kgをone shotに投与し,血中および各臓器内のプラチナ濃度を0.5,1,3時間毎に原子吸光光度計を用い測定した。その結果、血中プラチナ濃度は30分値ではLipo-CBDCAが高値であり,1,3時間値は共にfree-CBDCAが高値となり,Lipo-CBDCAの多くが肝臓にTargetingされ徐々に肝臓から放出された結果と推察される。また肝臓,腎臓におけるCBDCAの組織内濃度は肝臓では30分,1,3時間のいずれもLipo-CBDCA群が高値であり,腎臓では反対にLipo-CBDCA群が低値であり,臨床応用に際し腎機能障害等の副作用の軽減にも効果があるものと考えられる。さらにラット肝転移モデルを作成し,Lipo-CBDCA:30mg/Kg,free-CBDCA:30mg/Kg,control群の各々を腸間膜静脈より投与し生存率を比較検討しているが,control群の半数は腫瘍死しfree-CBDCA群の1例も腫瘍死したが,control群は全例生存中であり、Lipo-CBDCA群が生存率の延長傾向にあり,現在経過観察している。
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