癌性腹膜炎に対する新しい剤型として抗癌剤(シスプラチン、メトトレキサート、5-FU)を封入した乳酸オリゴマーマイクロスフェアを開発した。 [1]シスプラチン封入マイクロスフェア(CDDP-MS) ラットの腹腔内投与時の体内薬物動態を、CDDP-MSとシスプラチン水溶液の間で比較検討した。CDDP-MSではシスプラチン水溶液に比較して腹腔内でのシスプラチン濃度は有意に高く、一方末梢血中濃度は有意に低かった。 BDF1マウスを用いてシスプラチン水溶液とCDDP-MSの単回腹腔内投与時の急性毒性を検討した。Litchfield-Wilcoxon法で算定したLD50値は、CDDP-MSでは23.8mg/kgで、シスプラチン水溶液の13.5mg/kgに比較して1.8倍と、CDDP-MSがシスプラチン水溶液よりも著しく全身的毒性が軽いことが判明した。またその際の症状、病理組織学的所見、死亡時期、体重変化等から、CDDP-MSへの剤型変更による新たな毒性の発現はないことが判った。 10^6cells/マウスのM5076細網肉腫細胞をBDF1マウスの腹腔内に移植した癌性腹膜炎モデルを用い、CDDP-MSあるいはシスプラチン水溶液を腹腔内投与して延命効果を比較した。CDDP-MSでは、10mg/kgのいずれの投与量でも、同じ毒性のシスプラチン水溶液に比較して推計学的に有意に大きな延命効果を持つ事が判った。 [2]5-FU封入マイクロスフェア、メトトレキサート封入マイクロスフェア 生食中でのマイクロスフェアからの各抗癌剤の放出曲線を測定したところ、封入量の70%以上の量が7-21日間に渡って安定して徐放され、極めて安定なマイクロスフェアの作製が可能となった。現在、封入効率の向上など、製作上の効率向上を試みている。
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