研究概要 |
平成5年度までの研究成果から、当所の目的であったp53癌抑制遺伝子の不活性が食道癌の予後予測因子のひとつになり得ることを明らかにできた。1.p53癌抑制遺伝子の変異と欠失は高頻度に同時に生じていた。2.p53癌抑制遺伝子の変異はstageIIIやDNA aneuploidyを示した症例で高頻度に生じていた。3.p53癌抑制遺伝子に変異と欠失による不活化の生じている例では早期の再発例が高頻度であった。(1-3の内容はInt.J.Cancer,1994に掲載)4.p53癌抑制遺伝子の変異を検索するにあたって、迅速かつ確実に変異を解析することのできるcell sorting combined PCR-SSCP法を開発した。(Jpn.J.Cancer Res.,1992) しかし、p53癌抑制遺伝子の異常だけでは食道癌の予後予測は不可能でありさらに多くのparameterとなり得る遺伝子異常の解析が必要と思われた。そこで、4つの癌抑制遺伝子(APC,MCC,Rb,DCC)と3つの癌遺伝子(int-2,hst-1,cyclin D)の異常を解析し多変量解析による予後予測を試みている。APC,MCC,Rbに関してはいずれの異常も約半数の症例で異常が認められている。(Int.J.Cancer,1994に掲載)また、DCC遺伝子の欠失は高頻度にp53,Rbの異常を随伴し予後予測に有用なparameterと思われた(論文作成中)。平成6年度はこれら8の遺伝子異常を同一検体で解析し何らかの遺伝子診断情報による治療法の選択について検討したい。
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