(1)心停止30分後に、人工心肺を用いたコア-クーリング法を用いて肝を摘出し、人工心肺を用いない従来のin situ flushing法と比べた。人工心肺を用いたコア-クーリング法において、有意に肝組織ATPレベルは高く、虚血によって下降したエネルギーチャージも摘出前に上昇させうることが判明した。また、肝組織は温度が15℃においても、わずかながら酸素消費をすることが明らかとなり、冷却する過程においても人工心肺にて酸素を投与するこの方法の利点の裏づけとなった。 (2)虚血障害のある肝において、直ちに100%機能しなくとも、生命の危険がないように、異所性部分肝移植のモデルを確立した。また、下大静脈と移植肝下大静脈の吻合後に、大腿動脈に挿入したカテーテルを通して、門脈に動脈血を流す方法を取り入れた。この方法によってレシピエントの手術時間は短縮され、かつ血流再開された肝には、つねに酸素化された動脈血が供給されることになる。 (3)雑種成犬10-15kgを用いて、人工心肺によるコア-クーリング法下に心停止30分後に肝を摘出。その肝を右葉後区域の部分肝とし、門脈動脈化による異所性肝移植を行なった。コア-クーリング法により、肝のエネルギーチャージは0.28より0.46へ上昇し、移植した直後の肝静脈ケトン体比は0.81と良好であった。移植直後には胆汁排泄は認められなかったが、4日目以後、全例に胆汁排泄が認められるようになった。また、病理学的検討においても、肝壊死は認められず、移植肝が正常に機能していると思われる所見であった。 以上の1)人工心肺を用いたコア-クーリング法.2)自己の肝を温存した異所性肝移植.3)一時的門脈動脈化の3つの方法を応用することにより、心停止後の肝を臨床的に移植に利用する可能性が示唆された。
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