安全で確実に心臓死ドナーを用いた肝移植を行う方法として、平成4年度において、異所性部分肝移植の手術方法を確立した。そして、人工心肺を用いたコア-クーリング法および門脈動脈化を用いることにより、30分の温阻血肝の移植が可能となりうることを証明した。平成5年度は、これに引き続き、門脈動脈化の有用性をより明確にするために対照群を用いて比較検討した。実験モデルはイヌの30分温阻血肝を用いた異所性部分肝移植とした。その結果、移植直後に門脈の一時的動脈化を行なうことにより、活性酸素障害をきたすことなく、温阻血障害が軽減されることが明らかとなった。それに加えて、この門脈動脈化によって、血中のヒアルロン酸値が有意に改善し、ヒアルロン酸値は早期のviabityの判定に役立ち得ることが示された。これらのことから、肝の内皮細胞やkuppfer細胞の機能改善が門脈動脈化の有用性の一因であることが示唆された。また、プロスタグランディンE1を加えることにより、臓器への灌流血流量は増加し、温阻血障害が軽減することも明らかとなり、当初、目的としなかった結果も派生的に得られた。 本年度はイヌ20頭を用いて研究を行ったが、イヌの入手が後期より困難となってきたため、モデルをブタに変更している。また、長時間の冷保存を可能にするために、単純に保存液の組成を代えても現存のUW液に優る結果は得られなかった。むしろ冷保存による障害を少なくするためには、再灌流時の工夫が必要と考えられたため、この点は今後の研究の課題として残った。
|