研究課題
肝膵同時切除の耐術限界並びに肝・膵相関、再生の状況を検索するために雑種成犬を用いて実験的研究をおこなった。方法:70%肝切除のみをコントロール群(I群)とし、70%肝切除+2/3膵切除(膵の十二指腸付着部以外を切除:平均66.6%膵切除であった:II群)を作成して検討した。I群7頭、II群8頭に実験を行い、耐術例は4週間生存させた後、犧牲剖検を行って検索した。結果:生存率は、手術死や偶発症による死亡を除くと、I群100%、2群66.7%であった。II群に於ける死亡例の死因は、肝不全と考えられた。肝再生率((剖検時肝重量ー肝切除時推定残存肝重量)÷切除肝重量×100(%))は、I群85.3%・II群96.3%であり、膵切を加えた群で対照群より肝再生率が大きい傾向も見られた。更に膵切群では剖検時に残膵の重量が平均約50%の増加を示していた。この間の血行動態や、生化学的検査データでは両群に差異を認めておらず、形態学的及び内分泌学的検索は現在継続中である。考案:70%肝切除に2/3膵切除を加えても充分に耐術し得ることが明かとなった。II群の死亡例も手術時間が長く、術中の出血も多くて、技術的な要因に関連が深い可能性が示唆されている。今後は更に広範囲の膵切を加えた群について検索を加える予定である。肝再生については、内分泌学的及び形態学的に検討中であるが、再生率でみて2/3膵切群で対照群に対し遜色を認めなかった。膵切群での残存膵の重量増加については肝膵臓器相関の関与について今後の検討を要する課題と考えられた。