研究概要 |
近年、発癌に対する胆汁酸の影響が注目されているが、胆管細胞癌においても発癌と胆汁酸の関連について検討した報告が散見される。しかし、一次胆汁酸が促進的に働くとするもの、二次胆汁酸が促進的に働くとするもの、胆汁酸の影響はないものなど、この課題には一定の見解をみない。本研究では、ハムスターに一次胆汁酸あるいは二次胆汁酸を経口投与し、これら胆汁酸負荷の胆管細胞癌発生増殖に及ぼす影響を、また、胆汁酸経口投与に基因する病態と発癌との関連を検索する。 雄性syrian golden hamsterに発癌剤としてdiisopropanolnitrosamine(DIPN)500mg/kg体重を週1回の頻度で10週間腰部皮下に投与した。これらのハムスターはDIPN対照群(標準固型飼料投与)、DIPN-TCA群(0.5%taurocholic acid含有飼料投与)およびDIPN-DCA群(0.5%deoxycholic acid含有飼料投与)に分けられ、実験開始後20週まで観察された。 初年度に得られた成績は以下の如くである。 1.体重:DIPN対照群の体重は20週まで漸次直線的に増加したが、DIPN-TCA群およびDIPN-DCA群の体重は10週目まで増加し以後減少し、20週目には処置前値に比し有意に低下した(p<0.05,0.01)。 2.飼料摂取量:ハムスター1匹当りの1日の平均飼料摂取量についてみると、胆汁酸投与の両群の摂取量は対照群に比し有意に少なかった(p<0.01)。 3.胆管細胞癌の発生増殖:実験開始後15週以後に腫瘍の発生をみた。15週目の胆管細胞癌発生率はDIPN対照群が0%,DIPN-TCA群が13%,DIPN-DCA群が29%で、20週目の発生率は各々23%,60%,59%であった。20週目に対照群と胆汁酸投与両群との間に有意差をみた(p<0.05)。腫瘍個数も胆汁酸投与両群は対照群に比し多く20週目に有意差をみたが、腫瘍径には有意差が両者間でなかった。
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