研究概要 |
この研究は、胆管細胞癌の発生増殖におよぼす胆汁酸負荷の促進効果を明らかにするために、ハムスターを用い、実験的に行われた。体重100g前後の雄性syrian golden hamsterの腰部皮下に、発癌物質としてdiisopropanolnitrosamine(DIPN)50mg/kg体重を週1回の頻度で10週間投与した。これらのハムスターを標準固型飼料投与のDIPN対照群、0.5%タウロコール酸ナトリウム含有飼料投与のDIPN-TCA群および0.5%デオキシコール酸ナトリウム含有飼料投与のDIPN-DCA群に分け、10-20週目の各種検索を行った。 1.15週目以降に0.1-1.5cm大の結節状腫瘍の発生が各群の肝臓にみられ、いずれも異型性の強い緻密な結合織性間質を伴う胆管細胞癌であった。20週目の胆管細胞癌発生率はDIPN対照群が23%、DIPN-TCA群が60%およびDIPN-DCA群が59%であった。対照群と胆汁酸負荷両群との間に有意差をみた(p<0.05)。 2.10および15週目の細胆管増生と胆管上皮の乳頭状増生の発生率や、それらの部位の上皮細胞におけるbromodeoxyuridine標識率およびmitotic indexは、胆汁酸負荷の両群に高く、対照群との間で一部に有意差があった(p<0.05,0.01)。 3.10-20週における胆管胆汁中の胆汁酸組成比率についてみると、胆汁酸負荷の両群では一次胆汁酸の減少と二次胆汁酸のDCAの増加が認められ、特にDCA組成比率では対照群の値との間に有意差をみた(p<0.01)。 以上の成績は、経口投与されたTCAおよびDCAが、DIPN誘発胆管細胞癌の発生増殖に促進効果を有することを示唆する。
|