研究概要 |
当施設にて切除された新鮮大腸癌組織50例と肝転移組織7例、さらにパラフィン切片の原発大腸癌組織80例(肝転移45例、非肝転移35例)を用いて、メタロプロテアーゼ(MMP-1,-2,-3,-9,TIMP)と、セリンプロテアーゼ(u-PA,t-PA,PAI-1,PAI-2)の分泌能について検討した。又、切除大腸癌の病理組織学的因子との関連についても検討を行った。検索方法としては、免疫学的酵素抗体法,Zymogram,Western Blotting法を行った。 <結果>1.MMP分泌能に関しては、大腸癌部でMMP-2,-9の高い分泌を認めた。とくにMMP-2は癌部においては活性型で存在していた。この結果は、癌部では非活性型のMMP-2を活性化するactiuatorが存在すると同時に、そのactiuatorの分泌メカニズムに対しても、癌細胞が大きく関与しているす能性がある点で興味深い。 2.パラフィン切片での原発巣80例の検討では、原発巣のMMP-9の発現と肝転移との間に相関を認めた。この結果は、原発巣でのMMP-9の発現性が異時性肝転移の予知にも有用である可能性が示唆された点で重要と考えられる。 3.肝転移巣でのMMPの分泌は、原発大腸癌部と比較して相関はなく分泌能としては、原発巣より減少していた。 4.病理組織学的因子とMMP分泌能との検討では、低分化型腺癌でMMP-9の分必が高い傾向にあった。 5.PA,PAIの検討では、大腸癌でu-PAの発現が高く、PAIの発現は低かった。u-PAは癌細胞から分泌され、PAI-2は癌部の間質細胞から主に分泌されていた。
|