心停止後に摘出した肺の保存および移植に関する実験的研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670816
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 半田 政志 東北大学, 抗酸菌病研究所・外科, 助手 (70211498)
• 研究分担者: 近藤 丘 東北大学, 抗酸菌病研究所・外科, 助手 (10195901)
• キーワード: 肺移植 / 脳死 / 心停止ドナー / 細胞外液類似組成保存液

研究概要

肺移植においては、ドナーとして脳死者からの臓器摘出が前提となっているが、本邦では、欧米に比べて、死生観の違いなどから、脳死に対する社会的合意が、まだ得られておらず、移植臨床に踏み切れない現状にある。また、今後脳死が社会的に認められたとしても、臓器提供者数は限られたものであり、ドナー不足は必至である。この問題の解決のため、我々は、心停止後の肺の利用を考案し、その可能性について、イヌを用いて検討した。
雑種成犬6頭をドナーとし、硬膜外腔にバルーンを挿入し、脳圧亢進状態を作成した。厚生省脳死判定基準のうち、脳波以外の項目につき確認し、これにて脳死と認定した。6時間経過してから、ヘパリンとステロイドを前処置として投与し、その後人工呼吸器を外し、心停止させた。心停止後20分放置したのち開胸し、左肺を摘出した。取り出した肺を、細胞外液類似組成液であるEp4液で肺内血液を洗い流してから、レシピエントに同所性に同種移植をした。
6頭中1頭は、術後4日目に、肺炎に伴う呼吸不全によって死亡したが、他の5頭は生存した。生存した5頭に対して、移植後1週に対側肺動脈遮断を行い、移植肺の機能を検討したが、3頭がこの検査に耐え、移植肺の機能が温存されていることが確認された。残りの2頭は、気管支吻合部の縫合不全のため、機能検査には耐えなかった。
今日まで、心停止後の肺はshock lungに陥ると考えられており、肺移植には適さないとされてきたが、以上の実験成績より、心停止後の肺でも移植に供しうることが示された。

研究成果

• [文献書誌] 半田 政志: "臓器移植における今日の免疫抑制薬" 呼吸. 11. 452-457 (1992)
• [文献書誌] 半田 政志: "特集.臓器移植ー世界における現況とわが国における展望ー 片側肺移植" 外科診療. 34. 869-873 (1992)
• [文献書誌] 半田 政志: "呼吸不全患者における肺移植の現状と将来" medical Practice. 9. 1345-1347 (1992)
• [文献書誌] 半田 政志: "肺保存液の開発 リン酸緩衝液とした細胞外液組成液による肺保存" 医学のあゆみ. 163. 182- (1992)
• [文献書誌] 近藤 丘: "肺移植の現状と展望" 臨床胸部外科. 12. 439-443 (1992)
• [文献書誌] 近藤 丘: "肺移植臨床と研究の現況" 今日の移植. 5. 443-448 (1992)
• [文献書誌] 一ノ瀬 高志: "心停止後摘出肺同種移植の実験的研究" 移植. 27. 309-315 (1992)
• [文献書誌] 一ノ瀬 高志: "心停止後摘出肺を用いた保存の実験的研究" 移植. 27. 300-308 (1992)
• [文献書誌] 岡田 克典: "脱血心停止Donor肺の24時間保存および同種移植に関する実験的研究" 移植. 28. 38-45 (1993)