研究概要 |
〔目的〕平成4・5年度の研究では脳死後心停止したドナーの肺を用いた肺移植の実験を行い良好な結果が得られた.この結果が臨床に応用できれば,肺移植のドナーソースは大幅に拡大される.さらに脳死後心停止したドナー肺の保存が可能になれば,遠隔地への輸送ができ,より適したレシピエントを選択することが可能となりさらにドナーソースが拡大される.そこで平成6年度は,脳死後心停止したドナーの肺を24時間保存し,移植する「移植肺の移送を考慮した脳死心停止後24時間肺保存」の実験を行った. 〔材料・方法〕6頭のイヌを用い,3頭をドナー・3頭をレシピエントとした.ドナーを脳死後心停止せしめ前年度と同様に心肺を摘出しEp4液を用い24時間保存した.免疫抑制剤としてアザチオプリンとメチルプレドニゾロンを投与しした.移植直後と7-14日後に右肺動脈閉塞試験を行ない移植肺の機能を検索した.その後犠牲死せしめ組織学的な検討も行った. 〔結果〕移植を行った3頭のうち1頭は移植9日目に含気性を失い,2回目の右肺動脈閉塞試験を行なうことができなかったが,残る2頭では2回目の右肺動脈閉塞試験が可能であった.100%O2吸入右肺動脈閉塞時の動脈血酸素濃度の推移をみると,No1とNo2では移植直後の値は低下していたが,No2では2回目の試験までに回復した.(No1では2回目の試験を行うことができなかった.)No3は移植直後から良好な酸素化能を有していた.右肺動脈閉塞時の肺動脈圧の推移は,No2では移植直後の肺動脈圧は高値だったが,2回目の試験までにほぼ回復した.No3では移植直後は正常であったが,2回目には上昇していた.右肺動脈閉塞時の心拍出量を見ると3例とも低下は認められなかった. 〔結論〕脳死心停止後に摘出し24時間保存したドナー肺でも移植肺として使用できることが示された.
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