[目的]実際に臨床で肺移植を行うに際しては、ドナーの確保が重要な課題となる。そこでドナーソースの拡大とドナー肺の遠隔地への移送を考えた脳死心停止ドナーからの肺移植モデルを作成した。 [材料・方法]4つの実験群を作製した。I群はコントロールで開胸操作のみを加え、移植を行わなかった群。II群は脳死ドナーの肺を移植した群。III群は脳死後心停止したドナー肺を移植した群。IV群は脳死後心停止したドナー肺を24時間保存し移植した群とした。脳死状態はイヌの頭蓋内にバルーンカテを挿入し脳圧を亢進させることによりを作製した。6時間脳死状態を保った後レスピレーターを止め心停止に至らしめた。心停止後20分放置し、心肺を摘出しEp4液で肺動脈より血液を洗いだし、24時間保存後移植した。II群・III群では途中のそれぞれ設定した時点で移植した。移植直後と7-14日後に右肺動脈閉塞試験を行ない移植肺の機能を検索し、また組織学的検討も行なった。 [結果]II群では5頭中2頭に移植後の合併症を認めた。III群では8頭中3頭に肺炎、2頭に軽度の拒絶反応の所見を認めまが、4頭には異常を認めなかった。IV群の移植では1頭は移植9日目に含気性を失い、2回目の右肺動脈閉塞試験を行なうことができなかったが、残る2頭には異常は認められなかった。右肺動脈閉塞試験時の動脈血酸素濃度・肺動脈圧・心係数・心拍出量・総肺血管抵抗値の推移を検討したがII、III、IV群ともコントロール群と遜色のない結果が得られた。 [結語]今回の一連の実験により、脳死後心停止したドナーから摘出した肺でも移植に使用できる可能性が示唆された。脳死後心停止した患者からの肺が使用できるようになればドナーソースが大幅に拡大される。またさらに24時間の肺保存が可能になれば遠隔地への肺移送が可能になり、より適したレシピエントを選択することができる。
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