1.実験モデルの確立 平成4年度は、対象を日本白ウサギとし、その腹部大動脈に人工血管を移植したが、移植手術中および術後早期に、高率に死亡するため、平成5年度から対象動物を雑種成犬に変更した。又、5年度当初は、移植部位を犬の大腿動脈としたが、約1cmのグラフト長しか得られず、開存性の評価には不適と考え、移植部位を両側頚動脈に変更した。 2.グラフト開存性の評価 雑種成犬(15-18kg)の腹腔内に、小口径人工血管(Golaski社製、径3.5mmニットダクロングラフト)を1週間埋め込み、腹腔内より取り出した後、頚動脈に端々吻合で移植した。他側の頚動脈には、コントロールグラフト(腹腔内に埋め込みをしていないもの、Sauvageの方法に準じてpreclottingした)を移植した。計5匹に対して行い、術後3週で犠牲死させ、開存状況を肉眼的に観察したところ、両者とも1/5の開存率であった。腹腔内埋め込みグラフトが、開存性の低かった理由として、グラフト内面に付着した結合織成分特にコラーゲンの強い血栓性により、移植早期に閉塞(ドップラー血流計により確認)したものと考えられた。 3.今後の展開 現在、グラフト内面への結合織成分の付着を最小限に抑えるため、腹腔内埋め込み日数を2-3日としている。またこれとは別に、preclottingしたグラフト内面に、腹腔内洗浄液中の細胞をseedingしたものの抗凝固能と開存性を検討中である。
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