研究概要 |
肺は常に外界と接しておりマクロファージを中心とする免疫担当細胞が豊富に存在するために免疫反応がおこりやすく、移植の際の拒絶反応も強いと考えられる。拒絶反応にはT細胞が重要な働きをするが、近年T細胞の活性化にはTCR/CD3を介したジグナルの他に、接着分子を介した第二のシグナルが必要なことが明らかとなってきた。さらに第二のシグナルがない状態でTCR/CD3からのシグナルが伝達されると免疫寛容が誘導されることも示されている。本研究では以上の理論に基づき、肺移植において接着分子のLFA-1/ICAM-1をブロックすることで拒絶反応が抑制できるか否かをラットを用いて検討した。 先ず正常肺の特徴を検討した。肺に存在するリンパ球の接着分子の発現及びリンパ球分裂促進物質に対する反応は、他の末梢リンパ球に比べて有意な差はなかった。次に同系,異系間の肺移植を行い、経時的に移植肺に浸潤するリンパ球を解析した。免疫組織化学染色ではLFA-1陽性細胞の増加を得た。又、フローサイトメトリーによる二重染色による解析では移植肺に浸潤するTリンパ球上の接着分子の発現が経時的に増強していた。正常ラットに抗LFA-1,抗ICAM-1抗体を投与すると抗原変調が起きることが判明した。心移植で抗LFA-1+抗ICAM-1抗体投与を行ったところ免疫寛容は誘導できなかったが、生着期間の延長効果を認めた。肺移植における効果については現在検討中である。
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