研究概要 |
[研究の目的]肺線維症、線維性肺胞炎、肺気腫、嚢胞性肺疾患等の末期的肺実質性疾患に対する片肺移植又は両肺移植の成績は良好であり、5年生存率は65%に達している。原発性肺高血圧症やアイゼンメンガー症候群等の肺血管性疾患に対しては従来より心肺移植が行われていた。しかし最近はドナー獲得困難のこともあり片肺もしくは両肺移植が行われ始めた。しかし肺高血圧症に対する片肺移植では右心不全状態にあったレシピエントの右心機能や残存した病的肺の機能が問題とされている。また拒絶反応のメカニズムが肺実質疾患と異なるとも言われている。そのためには正確な肺及び心の血行動態の評価が可能な大型動物のモデルがどうしても必要である。 [研究の概要]3-5kgの幼弱ビーグ犬を用いた。デヒドロモノクロタリンをスワンガンツカテーテルを通して右房に注入した。デヒドロモノクロタリンを1.5mg/kg,3mg/kg,4.5mg/kgの3群に分け投与し1,2カ月後にスワンガンツカテーテルを挿入し心内圧、心拍出量等を測定し肺血管抵抗値を算出した。また右室左室重量比、血中エンドセリン等も測定した。結果1.5mg/kg群では肺動脈圧の上昇は軽度であったが、3mg/kgでは肺動脈圧(平均圧)は20mmHgから60mmHgと上昇し肺血管抵抗も150から1000dyne.sec.cm5.m2と著明に上昇した。血中エンドセリン-1も著明に上昇し肺動静脈の血管内皮細胞の障害が疑われた。4.5mg/kgでは全例1週間以内に肺水腫で死亡した。3mg/kg群を8週後犠牲死させ右室左室重量比を測定したところ右室重量が著明に増加していた。肺の組織所見では肺最小動脈の中膜の著明は肥厚が観察された。
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