研究概要 |
シビレエイよりアクチルコリン受容体(AchR)を抽出し,これを用いてラットに実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)発症させた。EAMGにおける脾臓および胸腺の鏡検的観察においては特徴的な知見は得られなかった。EAMGラットに対する脾臓摘出の免疫学的な効果を検討する目的にて各種パラメータの測定を行い,Sham手術群との比較を行った。抗AchR抗体価の術後経時的変化は,抗Torpedo-AchRおよび抗-ラット骨格筋AchRのいずれに対する抗体価も,脾摘群において有意に低値をとった。また術後4週にて採取したリンパ節リンパ球培養上清中の抗Torpedo-AchR抗体価は,脾摘群にて有意に低値をとった。同じ時期に採取したリンパ球を用いたリンパ節幼若化試験においては,マイトジェンとしてAchR,PTH,LPSいずれに対する応答も脾摘群にて有意に抑制された。胸腺摘出術も同時に施行群を設定し同様にパラメータの測定を行ったが,脾摘群と同様の傾向は認められたものの有意差は認められなかった。これは,鏡検の結果より考えると,胸腺を介さないEAMGの発症機転に起因するものと考えられた。よって胸腺摘出術と脾臓摘出術の相乗効果の評価は出来なかった。 EAMGにおける脾臓摘出術の免疫学的効果が有意に認められたが,今後はその臨床的(生理学的)効果の検討,およびリンパ球表面マーカーの測定によるリンパ球修飾を明らかにすることによりEAMG病態に対する脾臓摘出術の作用機序を検討する予定である。
|