当初の実験計画であるisolated working heart modelを使った虚血再潅流障害を防ぐべく長時間心筋保護効果の研究に先立ち、まず雑種成犬を用いて同様の実験を施行した。雑種成犬を用い、臨床に準じた体外循環心筋保護モデルを作成し、虚血再潅流障害における心筋Ca^<++>代謝を組織細胞化学的手段を用いて観察し、フリーラジカル消去剤(SOD、カタラーゼ)の長時間心筋保護(180分)の有用性について検討した。(1)ミトコンドリア内Ca^<++>ATPase活性は再潅流直後は高値を示すが、ラジカル消去剤投与群では、再潅流60分後で虚血前のレベルまで低下したのに対し、コントロール群では減弱し、電顕像では強い心筋障害を示した。(2)ラジカル消去剤投与群では、コントロール群に比ベ有意に、TBA(thiobarbituricacid)反応物質の増加、α-TOC(α-tocopherol)消費の抑制など細胞膜脂質の過酸化を阻止する所見が認められた。(3)以上より、ラジカル消去剤投与群では、再潅流時にミトコンドリア内Ca^<++>過剰流入が防御され、他の指標からも体外循環中の虚血後再潅流障害に対する有用性が示唆された。次にisolated working heart modelを使用し、長時間心筋保護の研究を心機能の面から検討した。現在ラット心を用い、心筋保護液単独(HTK液またはSt.Thomas液)をコントロール群とし、(1)半減期の長いPyranconjugated polgmer SOD添加群(2)Na^+-Ca^<++>交換機構の拮抗イオンとしてNi^<++>整剤添加群(3)心筋浮腫防止効果としてのCl^-チャネルブロッカー(lactobionate)添加群と比較し、再潅流時の虚血前値に対する心拍出量の回復率および再潅流時CPK放出量を測定する。現在それぞれにつき有意差を検定し、それらの薬剤の効果、有用性につき検討中である。
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