体外循環後の肺循環や冠循環、冠動脈再建後の冠循環、そして心臓、肺臓、腎臓、肝臓などの臓器移植後の臓器循環では、再潅流に起因すると思われる様々の血管傷害が発生し、しかも障害部位には常に顆粒白血球の付着がみられる。 本研究は、再潅流性肺血管障害がどのような原因によって起こされるのか、そして顆粒白血球はこの血管傷害の発生にどのように関与するのかを明らかにするために計画された。 (実験方法)人工換気下のWistar系ラット左肺を顕微鏡観察用吸引チャンバーに挿入固定し、蛍光顕微鏡で生体観察する。血漿蛋白の動きはFITC-albuminで代用観察し、白血球はacridine redで生体染色可視化し観察した。阻血・再潅流は、観察左肺の主肺動脈をターニケイで20分間に渡り閉鎖し、その後解除することによっておこなった。再潅流直前に生食水を清注したものを、通常の再潅流性肺血管障害群とした。また、生食水の代わりにsuperoxide dismutase(SOD)を投与することによって、再潅流性肺血管障害の発生とSODとの関係を検討した。 (実験成績と結論)阻血後生食水を静注し再潅流させたものでは、肺毛細血管に白血球が付着し、肺細静脈から血漿蛋白が浸出した。一方、阻血後SODを静注し再潅流させたものでは、肺毛細血管への白血球付着数は減少し、肺細清脈からの血漿蛋白浸出も見られなかった。 以上より、再潅流性肺血管障害は再潅流時に血管内皮に活性酸素が発生し、これによる血管内皮傷害により、白血球が肺毛細血管に付着し、付着白血球から産成放出されるleukotorieneなどの血管傷害物質が肺細静脈を傷害することによって起こされるものと結論した。
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