研究概要 |
(1)雑種成犬を用いた動物実験により経皮的静・動脈バイパス(VAB)と経皮的左心バイパス(AAB)のPTCA施行時の循環補助効果を検討した。重症冠動脈疾患モデルに置いて、左前下桁枝(LAD)に対するバルーン拡張時の心筋虚血による左心機能の低下はVAB補助ではコントロール(補助循環無し)に比較して著明な補助効果は得られなかった。一方、AAB補助では血圧が100mmHg以下になるまでの時間および心室細胞に至るまでの時間はコントロールやVAB補助時に比較して5倍以上(500〜700秒)に延長した。AAB補助併用により5分以内のLAD領域でのバルーン拡張では重症例においても容易に血圧低下や心室細動を来すことなく安全なPTCAが施行可能なことが示唆された。(第40回日本心臓病学会発表1992,10,15-17高松市) (2)経皮的AAB法による循環補助施行症例の心房中隔穿刺部位の病理学的検討を剖検例5例で行い、我々が開発したカニューレの長期留置により心房中隔穿刺部周囲に裂隙を生じることなく、AAB補助離脱後遠隔期に死亡した症例では穿刺部位が完全に治癒閉鎖していることが確認され、我々の用いる極めて軟らかい外径18Fr.左房脱血用カニューレはヒトにおける長期留置に安全であることが確認された。(第40回日本心臓病学会発表1992,10,15-17高松市) (3)臨床例6例で経皮的AAB補助を施行し、術中経食道心エコー図検査により経心房中隔左房脱血用カニユーレ周囲から全く左右心房間に短絡血流が生じていないことを確認し、卵円か中央を穿刺することが剖検結果および経食道心エコー図観察により最も安全と考えられた。但し、経皮的左心バイパスより補助人工心臓補助へ移行する場合は右房を切開し確実に心房中隔交通を閉鎖する必要がある。(第30回日本人工臓器学会発表1992,11,4-6東京)
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