平成5年度までに外科的切除を行なった122例の肺癌で、組織型別にCisplatin(CDDP)感受性とグルタチオン関連酵素ならびに増殖抗原発現の関係を検討した。感受性の判定は腫瘍細胞をCDDP加RPMI溶液と培養し、DNAヒストグラムでS期あるいはG2M期の増加がみられるものをCDDP感受性群、無変化のものを非感受性群とした。また免疫組織学的にGlutathioneperoxidase(GPX)、Glutathione reductase(GR)、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)、Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)の発現を酵素抗体間接法で調べた。対象症例のCDDP感受性率は33%で、組織型別では小細胞癌86%、大細胞癌40%、扁平上皮癌31%、腺癌6%であった。CDDP感受性とGPX、GR発現には逆相関が認められ、各組織型のGPX、GR発現頻度は腺癌で最も高く、以下大細胞癌、扁平上皮癌、小細胞癌の順となっていた。また小細胞癌を除く非小細胞肺癌197例ではCDDP感受性群にPCNA、EGFR発現が有意に低かった。これらの所見よりグルタチオン関連酵素ならびに増殖抗原の免疫組織学的検索は肺癌のCDDP感受性推定に有用と考えられた。平成6年度は接着因子として癌の浸潤、遠隔転移の点で注目される糖鎖抗原、アポトーシスとの関連が推定されるLe^y抗原、p53癌抑制抗原とCDDP感受性との関係についても研究を進める予定である。
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