外科的切除を行なった107例の非小細胞肺癌で、Cisplatin(CDDP)感受性とグルタチオン関連酵素ならびに増殖抗原発現の関係を検討した。CDDP感受性の判定は腫瘍組織を浮遊細胞とした後、CDDPを加えたRPMI溶液と培養し、フローサイトメトリーによるDNAヒストグラムで対照と比べてS期あるいはG2M期の比率の増加がみられるものをCDDP感受性群、無変化のものを非感受性群とした。またホルマリン固定後の病理標本を用いて免疫組織学的にグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、グルタチオンリダクターゼ(GR)、増殖細胞核抗原(PCNA)、上皮細胞増殖因子リセプター(EGFR)の発現を酵素抗体間接法で調べた。対象症例のCDDP感受性率は大細胞癌40%、扁平上皮癌31%、腺癌6%であった。一方GPX、GR発現は扁平上皮癌26%、大細胞癌50%、腺癌61%で、CDDP感受性とGPX、GR発現には逆相関が認めら、CDDP感受性群は非感受性群に比べてGPX、GR発現が有意に低かった。またCDDP感受性群は非感受性群に比べてPCNA、EGFR発現が有意に低かった。以上の結果は細胞内グルタチオンが制癌剤の代謝に関係し、増殖脳の高い肺癌はCDDPでDNA障害を受けても修復が速いため結果としてCDDP非感受性になることが示唆された。これらの所見よりグルタチオン関連酵素ならびに増殖抗原の免疫組織学的検査は肺癌のCDDP感受性推定に有用と考えられた。
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