現在、各種神経膠腫についてその第10染色体と第17染色体におけるloss of heterozygosity(LOH)を腫瘍組織、患者末梢血白血球、その両親の末梢血白血球について検索し、germ lineのLOHが両親由来なのかあるいは胎形成期に生じたものなのかを検討中である。悪性神経膠腫は高齢者に発生する事が多く、両親の白血球を得る事は極めて困難な事は昨年報告した。平成5年度は若年症例に対象をしぼり、両親白血球を含めて12症例のDNA検体を採取することができた。この12症例についてDNAを制限酵素切断しSouthern blot法にて検討したところ、第10染色体に1例、第17染色体に2例のLOHを腫瘍細胞DNAに認めた。しかし、このDNA異常は患者白血球には見いだし得ず、germ lineのLOHは現地点では発見できていない。昨年は10例の悪性神経膠腫組織を解析し、第17染色体に5例・第10染色体に3例のLOHを認めたが、患者年齢層の変化による発見頻度の低下とも考えられる。この結果は、本実験法RFLPが神経膠腫遺伝子のpoint mutationを高率的にdetectできないという欠点による制約とも考えられ、今後は症例を更に蓄積すると共に他の方法を併用し検討を重ねる予定である。最近、神経膠腫第17染色体上の異常はp53遺伝子の異常に帰着できることが定説となっており、p53遺伝子の異常に狙いを絞り、SSCP-PCRおよびsequencingによりp53遺伝子の部分欠失・point mutationを効率的にdetectし、その異常の由来を患者白血球および両親白血球DNAとの比較にて検討することである。現在、既にnon-isotonic SSCP法の技術を当施設内で応用しており、今後p53 geneのexon 5〜exon 9について上記症例の検討を開始するところである。特に、小児神経膠腫例についてそのgerm line mutationの由来について検索していく予定である。
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