研究概要 |
クモ膜下出血(SAH)後に発生する脳血管〓縮の病態に免疫学的反応が一つの役割を果している、というのが実験的仮説である。この仮説を検証するために、脳血管〓縮に対する免疫抑制剤による治療を動物実験モデルに行なった。すでにわれわれはcyclosporineによる実験を行なっており、仮説支持の結果を得ているので、今回は新しい免疫抑制剤であるFK-506を用いて実験を行なった。雑種成犬をsham群,SAH群,治療I群(0.15mg/kg/day筋注),治療II群(0.3mg/kg/day筋注)に分けた(各群10匹)。SAHはDay0とDay3に自家血3mlを大槽内に注入する“two hemorrhagemodel"を用いた。血管撮影はDay0,Day7に行ない、脳底動脈径を測定した。血管撮影上の脳底動脈を上中下に3等分し、各々の中点での径を測定し、脳血管〓縮率(Day7の血管径/Day0の血管径×100(%))を求め各群で比較検討した。さらにDay0,Day7で血中補体第3因子(C_3),血清補体価(CH_<50>)を測定した。Day7で犬をsacrifice後、脳底動脈を摘出し直ちに凍結し、免疫組織染色用に保存した。現在までの測定によると、脳血管〓縮率はsham群97.2±5.6%,SAH群58,2±4.9%,治療I群57.2±5.5%,治療II群59.2±6.2%で、t-検定ではSAH群と両治療群との間に差はみられなかった。又C_3値,CH_<50>値でも4群間で全く差がみられなかった。これらの結果より,FK-506で抑制される免疫反応はSAH後の脳血管〓縮の発生における病態には関与していないものと思われる。今後摘出した標本において免疫グロブリンの沈着を調べるために免疫組織染色を行なっていきたい。さらに治療に用いたFK-506をin vitro studyに用いて、isometric tension studyを行ない,薬剤の薬理学的作用について研究を行ないたい。
|