Glial fibrillary acidic protein(GFAP)は、astrocyteに特異的に存在するglial filamentの主要な構成成分であるが、その生理的機能や鍾腫の悪性度との関連機構については殆ど解明されてきていない。我々は開始コドンのATGも含めた全翻訳領域のヒトGFAP cDNAが組み込まれ、Neomycin耐性遺伝子を持った発現ベクターであるpBabe neo:GFAPをGFAP非発現細胞に遺伝子導入して、GFAP発現細胞に変換し、それによる細胞動態の変化と腫瘍悪性度との関連性を解析し、GFAPの生理的活性の意義につき検討を加えてきた。前年度に確立したGFAP非発現細胞株DAOY-lmedulloblastoma cell lineの遺伝子導入によるGFAPの発現株化された細胞(この細胞株をGFAP-DAOY-lとする)及び、同様な手法でGFAPcDNAを組み込んでいない発現ベクターpBabeNeoを遺伝子導入した細胞(この細胞をNeo-DAOY-lとした)の、これら2種類の細胞株に対しその細胞動態を検討した結果、GFAP-DAOY-lはNeo-DAOY-lに比べて、1)経時的な細胞増殖率が低下し、2)脳腫瘍関連抗原(特に最近細胞接着因子との関連性が注目されてきているG-22関連抗原)の細胞表面への発現量が増加し、3)ACNUやCisplatinum等の抗腫瘍剤に対する薬剤感受性が増幅され、同量の薬剤濃度にて細胞の致死率が上昇したが、4)形態学的には著明な変化は認められなかった。GFAPの発現が細胞の薬剤感受性と関連することは、この遺伝子導入が抗腫瘍剤との併用により治療効果を高める可能性が示唆され、これはGFAP遺伝子が遺伝子治療へと応用される可能性があり、今後更に検討を重ねて行く予定である。
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