Glial fibrillary acidic protein(GFAP)は、astrocyteに特異的に存在するglial filamentの主要な構成成分で、他の中間系フィラメントと共に神経細胞の分化度や腫瘍化及びその悪性度との関連性についても注目されてきているが、未だその生理的機能や腫瘍の悪性度との関連機構については殆ど解明されてきていない。我々は開始コドンのATGも含めた全翻訳領域のヒトGFAP cDNAが組み込まれ、Neomycin耐性遺伝子を持った発現ベクターであるpBabeneo:GFAPをGFAP非発現細胞に遺伝子導入して、GFAP発現細胞に変換し、それによる細胞動態の変化と腫瘍悪性度との関連性を解析し、GFAPの生理的活性の意義につき検討を加えた。まずpBabe neo:GFAPをリポソームに包埋し、GFAP非発現細胞株のDAOY-1medulloblastoma cell lineに遺伝子導入した結果、導入後3日目に原形質内にGFAPの発現がwestern blottingにより確認され、更に経時的にその産生量が増加する傾向を呈した。更にneomycinにて遺伝子導入された細胞を選別するとその細胞からの溶出蛋白量に対する陽性率は上昇し、選別過程で遺伝子導入株が予定どうり選定出来ていることが確認された。(この細胞株をGFAP-DAOY-1とする)また、同様な手法でGFAPcDNAを組み込んでいない発現ベクターpBabeNeoを遺伝子導入した細胞をコントロールとして作製した。(この細胞をNeo-DAOY-1とした)これら2種類の細胞株に対しその細胞動態を検討した結果、GFAP-DAOY-1はNeo-DAOY-1に比べて、1)増殖率が低下し、2)脳腫瘍関連抗原の細胞表面への発現量が増加し、3)ACNUやCisplatinum等の抗腫瘍剤に対する薬剤感受性が増幅されたが、4)形態学的には著明な変化は認められなかった。GFAPの発現が細胞の薬剤感受性と関連することは、この遺伝子導入が抗腫瘍剤との併用により治療効果を高める可能性が示唆され、臨床応用への可能性につき更に検討を続ける予定である。
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