研究概要 |
虚血性脳浮腫の発生に対するプロテインキナーゼC(PKC)の関与を検討するために、本年度は中大脳動脈閉塞による局所脳虚血を作製し、プレテインキナーゼC(PKC)の虚血による変化を調べた。ラットを用いて、頸部の内頸動脈から糸付塞栓子を中大脳動脈まで挿入し、局所脳虚血を作製した。虚血前、脳虚血作製2および4時間後に、断頭により屠殺した後、虚血巣を取り出し、リン酸緩衝液中でhomogenateした後、100,000gの遠心により、cytosol fractionとmembrane fractionに分離し、アマシャムのPKCアッセイシステムを用いて、虚血巣におけるPKC活性を測定した。虚血前のPKC活性はcytosol fractionでは7.03±0.38pmol/min、membrane fractionでは6.29±0.58pmol/min、虚血作製2時間後はcytosil fractionでは7.82±1.33pmol/min、membrane fractionでは6.40±1.07pmol/min、虚血作製4時間後では、cytosol fractionでは4.03±1.33pmol/min、membrane fractionでは3.49±0.53pmol/minであった。虚血2時間後では、虚血前に比べてPKC活性はcytosol fractio,membrane fractionとも、むしろ亢進していたが、推計学的に有意ではなかった。虚血4時間後では、cytosol fraction,membrane fractionともに、PKC活性は有意に低下していた(p<0.001)。前年度の結果では、局所脳虚血作製4時間後における虚血脳では、Na^+/K^+-ATPase活性の低下がみられ、これに伴って、脳浮腫が発生しているのが認められ、この脳浮腫はPKC inhibitor投与では軽減されなかったが、PKCのstimulator投与により、Na^+/K^+-ATPaseの低下が抑制され、脳浮腫が軽減した。これらの結果から脳虚血においては、PKC活性の低下が、Na^+/K^+-ATPase活性に影響を及ぼし、虚血性脳浮腫の発生に関与している可能性が示唆された。
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