研究概要 |
ウィリス動脈輪閉塞症(以下本疾患)の病因を解析する目的で、培養血管平滑筋細胞(SMC)を用い、TGF-βに対する反応性を検討した。対照の正常SMCではTGF-β(1ng/ml)で増殖活性が抑制されるのに対し、本疾患患者かよのSMCでは増殖活性が有意に促進された(EGF,IGF-1とのsynergic効果は見られた)。basicFGFに対する反応性も同様に有意に低下していた。この作用期序については現在検討中である。次に、細胞老化に伴う本疾患患者SMCの生物学的特性を調べたところ、PDGFによるDNA合成促進活性は生涯を通して正常細胞より低下していた。これらの結果は血管細胞の機能変化が本疾患における内膜肥厚の進展のメカニズムに関与していることを示唆している。一方、本疾患患者SMCの染色体は、G-bandingによる分析結果では異常が見出せなかった。DNA多型性(RFLP)を利用した染色体異常部位の検討も始めたが、これまでのところ異常がみつかっていない。今後のさらなる検討が期待される。本疾患のgenetic analysisの一環として、HLAのtypingを試みた。A,B,C,DR,DQ座について検討したところ、30検体のうち5検体にある種のハプロタイプ(A24-B52-CwX-DR15-DR6が観察された。 血管内皮細胞株の樹立については、本疾患が小児期に多発するため適当な資料の入手が困難であるために、細胞株の樹立が遅れ、現在までにやっと2細胞株を樹立した。その特性について現在正常細胞との比較検討を開始したところである。
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