研究概要 |
ウィリス動脈輪閉塞症(以下本疾患)の病因を解析する目的で、培養血管平滑筋細胞(SMC)を用い、各種成長因子に対する反応性に関して検討した。対照の正常SMCではPDGF単独で強い増殖活性を示し、EGF,IGF-1とのsynergic効果は殆ど見られない。これに対し、本疾患患者からのSMCではPDGFに対する増殖活性が有意に低下していた(EGF,IGF-1とのsynergic効果は見られた)。basicFGFに対する反応性も同様に有意に低下していた。次に、膜受容体の差異についてassayをしたところ、^<125>I-PDGFのspecific bindingも低下していた。V-maxは正常細胞の約1/2の値を示した。細胞当たりのレセプター数にも差がみられ、本疾患SMCでは、正常細胞(11.9x10^4)の約1/3であることが判明した。しかし、Kd値(平均値;99.7)は、正常細胞と有意差はなかった。これらの結果は、本疾患患者SMCのPDGFに対する反応性の低下はPDGF receptor数の低下にその原因があることを示している。そこで、^<125>I-PDGFのprocessingについて調べた。degradation(/cell)もまた本疾患SMCでは有意に低下していた。しかし各receptorにおけるinternalizationやdegradationは両者間で有意差は観察されなかった。PDGF receptorのdown-regulationは本疾患SMCでは有意に亢進していた。これらの結果はPDGF receptorのrecyclingが不十分であるか、または細胞内のpoolが減少していることを示している。 一方、本疾患患者SMCの染色体は、G-bandingによる分析結果では異常が見出せなかった。DNA多型性(RFLP)を利用した染色体異常部位の検討も始めたが、これまでのところ異常が見つかっていない。今後のさらなる検討が期待される。血管内皮細胞株については現在まで2細胞株を樹立し、その特性について正常細胞との比較検討を開始した。
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