研究概要 |
神経膠腫の増殖調節機構を明らかにする目的で、各種樹立細胞株を用いて細胞生物学的研究を行ってきた。血清も外因性細胞成長因子も必要とせず、長期縫代可能な、ヒト神経膠腫由来SK-MG-1細胞系を樹立した。SK-MG-1細胞は無添加のMCDB-104基礎培養液だけで、血清添加条件下とほぼ同速度で増殖し、現在200PDLを越えている。SK-MG-1細胞の順化培養液中には、各種成長因子が存在するものと考え同定を進めた。まず、既存因子としてTGFBが大量に存在するが、basicFGFやacidicFGFは存在しない。さらに、【.encircled1.】ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の増殖促進因子(G-ECGF)、【.encircled2.】新しいPDGF(AA,large form)、【.encircled3.】SK-MG-1細胞自身の増殖を抑制する因子(G-GI,外来性TGFbetanはこの作用はない)、以上、3種の、未知のものと予想されている因子を検出した。 G-ECGFの糖製を目的として、順化培養液を大量に作成し限外濾過で濃縮後、ゲル濾過を行った。20〜60kDaの分画にG-ECGF活性を回収した。さらにHeparin Sepliaroseクロマトで分離し、陰イオンカラム、逆相クロマトで精製した。還元条件でSDS-PABEにより17kDaの単バッドを検出した。現在、このペプチドのアミノ酸残基配列を調査中である。G-ECGFの性質は、分泌型で、内皮細胞に作用し線維芽細胞には作用しない、ヘパリンに結合せず、bFGFやaFGFの抗体と交叉しない、新規の因子と判定した。 PDGFのA鎖とB鎖にそれぞれ特異的な抗体を用いて、SK-MG-1細胞の順化培養液から、PDGFA鎖抗体と交叉する因子を検出した。分子量は27-30kDaで、AA(large form)ホモダイマーと考えられる。このPDGF(AA,large form)およびG-GIの精製・分子構造決定を検索中である。
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